学会について

理事長挨拶

日本脳神経外傷学会理事長 中瀬 裕之

日本脳神経外傷学会理事長
中瀬 裕之

  2020年3月より一般社団法人 日本脳神経外傷学会の理事長を拝命することとなりました。日本神経外傷学会は、神経外傷の予防・解明・治療のために1968年に設立された脳・神経外傷研究会に端を発し、1977年に日本神経外傷研究会が設立され、2010年に一般社団法人日本脳神経外傷学会となっています。この様な歴史ある学会の理事長を拝命することは身に余る光栄であり、その重責に身の引き締まる思いです。微力ではありますが本会の発展に全力を尽くしていく所存です。
  さて、脳神経外科学における最古の論文は、紀元前17世紀にEdwin Smithによる頭部や脊柱の外傷についての記述と言われています。つまり、神経外傷の手術は脳神経外科手術の始まりであり基本でもあります。頭部外傷診療に関しては、2度にわたる世界大戦をはじめとする戦場での診療を契機に進歩してきたと言われています。本邦では、昭和30年代以降に交通事故死者数の水準が日清戦争での日本側の戦死者数(2年間で1万7282人)を上回る勢いで増加したことから、「交通戦争」と呼ばれました。当時、頭部外傷に起因する死亡が全交通事故死70%以上を占め、頭部外傷患者に対する救急医療体制の整備と専門医育成の努力が、その後の日本脳神経外科学会隆盛の一因となっています(島 克司、脳外誌16:4-12, 2007)。時は流れ、最近では重症頭部外傷に対する緊急手術は減少傾向にありますが、小児や高齢者で神経外傷が多く発生するなど神経外傷への取り組みもまた変化しています。多くの先人が発展に尽力してきた本学会の取り組む内容も時代ととみに変化してきています。近年は従来の活動に加え、小児および高齢者の頭部外傷、スポーツ外傷、外傷性高次脳機能障害、幼児虐待、低髄液圧症候群など多様な外傷の病態解明・治療を取り扱う必要性がでてきました。
  本学会では、歴代理事長のもとに多くの改革がなされてきましたが、今後も会員からの御意見・要望や社会からの期待に応えて、本学会の使命達成に向けて努力したいと考えています。皆様の御協力、御指導を何卒よろしくお願い申し上げます。