委員会からのお知らせ

頭部外傷データバンク
検討委員会

頭部外傷データバンク検討委員会委員長 宮田 昭宏

頭部外傷データバンク検討委員会委員長
宮田 昭宏

我が国における頭部外傷データバンクは、全国的な頭部外傷疫学調査の必要性を当学会の故中村紀夫名誉教授が提案したことから始まりました。 1996年の準備委員会を経て、翌年開催された第20回日本神経外傷研究会において日本頭部外傷データバンク(Japan Neurotrauma Data Bank: JNTDB)検討委員会が設立され、1998年に最初のProject 1998が行われました。 3次救急施設に限定した10施設から集積された1002例の解析データから、国内の重症頭部外傷の年齢分布が初めて明らかとなり、若年者の交通外傷治療の重要性や米国TCDB報告との差異が明確に示され、国内の頭部外傷に関するデータ集積の重要性が再確認されました。 その後これまで間歇的に4回、いずれも1000例を超える重症頭部外傷症例が登録され、参加施設も全国32施設に増加し現在に至ります。


2004年から集積されたProject 2004では2002年の道路交通法の改正を受けた交通外傷の減少に伴う受傷機転の変化を鋭敏に反映しました。 2009年に開始されたProject 2009では世界に類をみない少子高齢化社会による受傷年齢分布の急激な変化が特徴的に示されました。 さらに2015年からのProject 2015では高齢化に加えて、抗血栓薬服用による頭部外傷への影響などが検討され、その時代を象徴する変化を象徴的に示してきました。 また、各プロジェクトは詳細に解析され、「神経外傷」紙上に報告書として掲載されています。 そして、これらの結果は我が国における頭部外傷の概要を示す資料として注目され、頭部外傷治療・管理のガイドライン作成にも活用されています。

全国から集められた頭部外傷の疫学データによって、受傷原因や医療体制など時代の変化に伴う全体像を知ること、そして予後調査を基にしたリハビリテーションや慢性期医療資源の適正配置など、将来を見据えた医療基盤の構築の基データとなることがこのデータバンクの目標です。さらに頭部外傷の予防的観点から、情報を社会へ発信することも当委員会の重要な役割の一つです。日本頭部外傷データバンクが日本の頭部外傷における精度の高い重要な医学的資源となるよう、今後も継続的に取り組んで参ります。

委員長 宮田 昭宏
副委員長
  • 末廣 栄一

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